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前回「遺伝子系譜はどうジョセフ・デアンジェロへつながったのか|家系図から最終確認のDNA鑑定まで」で確認した論点を受け、この回では逮捕後、何が司法で確定したのか | 有罪答弁と終身刑について、この回が担う固有の論点は何か。を扱う。
2018年4月24日のJoseph James DeAngelo逮捕は、Golden State Killer事件にとって大きな転換点だった。
しかし、逮捕は「すべての犯罪が法的に確定した日」ではない。
捜査上、「この人物が長年追われていた未知犯である」と判断することと、刑事司法上、「どの犯罪について本人が罪を認め、裁判所がどの刑を科したのか」を確定することは別である。
DeAngelo事件では、その間に約2年の司法手続があった。2020年6月29日、DeAngeloは13件の第一級殺人と13件の強盗目的誘拐についてguilty pleaを行った。さらに、起訴された26件とは別に、多数の未起訴犯罪について責任を認めた。そして2020年8月21日、裁判所は複数の終身刑を科した。
CASE066-07では、2018年までの「誰なのか」という捜査の問いから離れ、2020年の司法手続によって何が有罪として確定し、何が未起訴行為へのadmissionとして記録されたのかを分けて整理する。[3]
逮捕と有罪は同じではない
CASE066-06で扱った捜索令状宣誓供述書は、DeAngeloを逮捕・捜索するためのprobable causeを示す資料だった。probable causeは刑事手続を進めるための基準であり、最終的な有罪判決とは違う。
DeAngelo事件では、jury trialによる評決ではなく、plea agreementによって事件が解決された。したがって、2018年の捜査上の特定と2020年の法廷上の認罪・量刑は別の証拠段階として扱う必要がある。
6つの郡が共同で起訴した
2020年の共同検察発表によれば、DeAngeloはContra Costa、Orange、Sacramento、Santa Barbara、Tulare、Venturaの6郡のDistrict Attorneyによってjointly prosecutedされた。
この構造は、事件が複数地域にまたがっていたことの司法上の反映である。1970年代には各地域で別々の事件として捜査され、2000年代にDNAで系列が結びつき、2018年に一人の人物へ捜査線が収束した。[3]2020年には複数郡の検察が、一つのplea resolutionへ収束した。
2020年6月29日、13件の第一級殺人について有罪答弁した
Orange County District Attorneyを含む共同発表によれば、DeAngeloは2020年6月29日、13 felony counts of first-degree murderについてguilty pleaを行った。
これらには、multiple murdersや、rape・robbery・burglaryの遂行中の殺人に関するspecial circumstance allegationsが含まれていた。
ここで重要なのは、FBIなどが事件史を要約する「少なくとも13人を殺害した」という表現より、司法上はさらに具体的な段階へ進んだことである。
2020年6月29日以降は、単に捜査機関が13件を帰属しているのではない。本人が法廷で13件の第一級殺人についてguilty pleaを行った。
さらに13件の強盗目的誘拐にも有罪答弁した
同じplea hearingでDeAngeloは、13 felony counts of kidnapping to commit robberyについてもguilty pleaを行った。これらには、犯行中のfirearmまたはknifeのpersonal useに関するsentencing enhancementsが付されていた。
したがって、起訴罪としてのpleaは合計26 countsである。
13 first-degree murder counts
+
13 kidnapping-to-commit-robbery counts
=
26 charged crimes
この26を、後に出てくる161件の未起訴犯罪と混ぜないことが重要である。26は正式に起訴され、guilty pleaの対象となった犯罪である。
「13 murder + 13 rape」と書くのは正確ではない
Golden State Killer事件の一般記事では、殺人と性的暴行の件数が一緒に語られることがある。しかし2020年の起訴罪を正確に書くなら、13 first-degree murderと13 kidnapping to commit robberyである。
多数のrapeについてDeAngeloが責任を認めたこと自体は、公的発表に記録されている。ただし、それらすべてが「rape countとして有罪答弁された」という意味ではない。
CASE066では法的区分を優先し、13 murder + 13 kidnapping-to-commit-robberyが起訴罪へのguilty pleaと固定する。
61人に関する161件の未起訴犯罪も認めた
DeAngeloの司法的なresolutionは、26の起訴罪だけでは終わらなかった。
2020年6月29日の共同発表によれば、DeAngeloはさらに、61人の追加被害者に関する161件の未起訴犯罪についてadmitした。[1]
犯罪類型にはattempted murder、kidnapping to commit robbery、rape、robbery、first-degree burglary、false imprisonment、criminal threatsなどが含まれていた。
ここは法的表現を分けなければならない。
charged crimes
正式に起訴され、guilty pleaの対象となった26 counts。
uncharged crimes
その刑事事件で独立した起訴countとして有罪判決を受けたわけではないが、plea resolutionの一部としてDeAngeloが責任を認めた行為。
したがって、「187件について有罪判決を受けた」とは書かない。正確なのは、26の起訴罪にguilty pleaを行い、加えて161の未起訴犯罪をadmitしたである。
数字は「何を数えているか」を分ける
2020年8月21日のsentencing共同発表では、DeAngeloが87 individual victimsに対する犯罪を53 separate crime scenesで行ったと認めた、と整理されている。
そのうち、26人に関する犯罪についてchargesが filedされ、61 additional victimsに関する犯罪をuncharged crimesとしてadmitしたとされる。
- 数字: 13 / 意味: 第一級殺人のguilty plea counts
- 数字: 13 / 意味: 強盗目的誘拐のguilty plea counts
- 数字: 26 / 意味: charged crimesの合計
- 数字: 161 / 意味: admitted uncharged crimes
- 数字: 61 / 意味: uncharged crimesに関係するadditional victims
- 数字: 87 / 意味: sentencing発表で整理されたindividual victims全体
- 数字: 53 / 意味: separate crime scenes
これらは母数が違う。「13」「26」「161」「87」を同じ種類の件数として加算・比較してはいけない。
なぜ死刑裁判ではなくplea agreementになったのか
検察側は当初、死刑を求める方針を持っていた。しかし2020年、6郡の検察はDeAngeloのplea offerを受け入れた。
共同発表では、判断材料として、victimsとfamily membersへのconsultation、victimsとwitnessesの高齢化、key witnessesの死亡、defendant本人の年齢、事件規模、1.3 million pagesを超えるdiscovery、capital prosecutionが最大10年に及ぶ可能性が挙げられている。
ここで「証拠が弱かったからpleaにした」とは公的発表は説明していない。
検察側が示したのは、長期化するcapital caseと、本人に多数の犯罪を法廷で認めさせ終身収監を確定させるresolutionとの比較だった。
guilty pleaは捜査機関の主張とは違う
plea agreementはjury verdictとは異なる。
しかし、guilty pleaは単なる警察・検察の主張ではない。被告人が法廷で罪を認め、裁判所がpleaを受理し、そのpleaに基づいてjudgmentとsentenceを科す刑事手続である。
捜査上の仮説
↓
逮捕・probable cause
↓
起訴
↓
guilty plea / admission
↓
judgment / sentencing
2020年6月29日以降、13 murder countsと13 kidnapping countsは「捜査上そう考えられている」だけではない。本人がguilty pleaを行った起訴罪である。
uncharged admissionも「有罪判決」とは呼ばない
一方、161 uncharged crimesを有罪判決と呼ぶのも誤りである。
ただし、「起訴されていないから司法記録とは無関係」でもない。これらのadmissionはplea resolutionの中で法廷上行われた。
したがって法的区分は、convicted charged countではないが、plea proceedingで本人が責任を認めた行為である。
CASE066ではこの中間状態を維持する。
8月17日からvictim impact statementsが行われた
最終量刑に先立ち、2020年8月17日からvictimsとfamily membersによるvictim impact statementsが行われた。最終sentencingは8月21日だった。
この記事では個々の被害内容を再現しない。重要なのは、何十年も複数地域に分散していた被害が、一つの刑事手続の中で公式に記録され、被害者側が法廷で発言できる形に統合されたことにある。
8月21日、最終的にどのような刑が科されたのか
2020年8月21日の共同検察発表は、最終刑を次のように整理している。
DeAngeloはstate prisonへcommitされ、13 felony counts of first-degree murderについて11 consecutive life sentences without the possibility of paroleを科された。
これに、13 kidnapping-to-commit-robbery countsについてのadditional consecutive life termが続く。
さらに、weapon enhancementsについてdeterminate term of eight yearsが連続して科された。
共同発表の見出し自体も、13 murdersに対する11 consecutive LWOP termsと、13 kidnappingsに対するadditional consecutive life termを明示している。
FBIの現在の年表は、より簡略に「2020年、multiple life sentences without the possibility of paroleを受けた」と整理している。
刑の細部を記事で扱うときは、FBIの要約より、2020年8月21日のjoint prosecution releaseを優先する。
「13件の殺人=13本のLWOP」ではない
数字だけを見ると、13 murder countsなら13本のLWOPが並ぶように思える。
しかし最終共同発表の刑の要約は、11 consecutive life sentences without parole for 13 first-degree murder countsである。
したがって、記事側で勝手に「13 consecutive LWOP」と言い換えない。
量刑構造は、複数count、special circumstances、concurrent / consecutive treatment、enhancementsによって構成される。CASE066-07では、裁判所・共同検察が公表した最終要約をそのまま基準にする。
この時点で何が司法上確定したのか
2020年8月21日までに、少なくとも次のことは司法手続上明確になった。
1. Joseph James DeAngelo本人が被告人である
2018年の「捜査対象」という段階ではなく、People v. Joseph James DeAngeloとして刑事事件が処理された。
2. 13件の第一級殺人についてguilty pleaした
捜査上の帰属ではなく、本人が起訴罪として認罪した。
3. 13件の強盗目的誘拐についてguilty pleaした
これもcharged crimeとして処理された。
4. 161件の未起訴犯罪について責任を認めた
ただし、これらを161 additional convictionsと書かない。
5. 仮釈放なしの複数終身刑が科された
最終的に、DeAngeloが社会へ戻ることを前提としない量刑となった。
検証ポイント|司法手続について混同しやすい5点
2018年の逮捕で13殺人が確定した
不正確。 逮捕はprobable cause段階であり、13件の第一級殺人へのguilty pleaは2020年6月29日。
2020年に13 murder + 13 rapeで有罪になった
不正確。 起訴罪へのpleaは13 first-degree murder + 13 kidnapping to commit robbery。
161件はすべて独立したconvictionである
不正確。 公的発表はuncharged crimesへのadmissionとしている。
13 murdersだから13 consecutive LWOPを受けた
不正確。 最終共同発表は11 consecutive LWOP terms for the 13 murder countsと記録している。
plea agreementだから司法上は何も確定していない
不正確。 guilty pleaが受理され、judgmentとsentenceが科された。
捜査の物語は、司法の言葉に置き換わった
1970年代、事件は地域ごとに別々の名前で呼ばれていた。
2001年、DNAが離れた事件を結びつけた。
2016年、FBIは「DNAはあるが名前がない」状態で全国捜査を続けていた。
2018年、遺伝子系譜と通常捜査、直接DNA比較によってJoseph James DeAngeloが逮捕された。
そして2020年、事件は「捜査機関が誰を疑っているか」という段階から離れた。
13件の第一級殺人。13件の強盗目的誘拐。多数の未起訴犯罪へのadmission。そして仮釈放なしの複数終身刑。
ここで初めて、40年以上追われていた未知犯の事件史が、刑事司法上のjudgmentとsentenceへ変換された。
だが、この事件の影響は量刑で終わらない。
DeAngelo特定によってinvestigative genetic genealogyは広く知られ、他のcold caseでも利用が進んだ。一方で、犯罪捜査とは無関係な親族のDNA、第三者genealogy database、同意、privacy、捜査利用範囲という新しい問題も生まれた。
最終回CASE066-08では、Golden State Killer事件が捜査手法をどう変え、遺伝子系譜とプライバシーの境界をどこに残したのかを検討する。
FACT CHECK|出典・参考資料
- [1] Orange County District Attorney, “Joseph James DeAngelo Jr. Pleads Guilty to 13 Murders, 13 Kidnappings and Dozens of Additional Uncharged Crimes,” June 29, 2020
- [2] Orange County District Attorney, sentencing press release, August 21, 2020
- [3] Federal Bureau of Investigation, Timeline, entry for April 24, 2018 and 2020 sentencing
Golden State Killer――遺伝子系譜で追い詰めるまで 第7回 全8回 全8回を見る
- 01 Golden State Killerとは何だったのか|40年以上続いた捜査の全体像
- 02 複数の呼称はどう一つにつながったのか|East Area RapistからGolden State Killerへ
- 03 Golden State Killer|DNAは何をつないだのか|複数地域の事件を結びつけた法科学
- 04 Golden State Killer|なぜDNAがあっても捕まらなかったのか|CODISと長期未解決捜査の壁
- 05 Golden State Killer|遺伝子系譜捜査とは何か|DNAデータベースにない人物を親族から絞る仕組み
- 06 Golden State Killer|遺伝子系譜からデアンジェロ特定まで
- 07 Golden State Killer|逮捕後、何が司法で確定したのか|有罪答弁と終身刑
- 08 Golden State Killer事件は捜査をどう変えたのか|遺伝子系譜とプライバシー