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ACARSとトランスポンダはなぜ途絶えたのかMH370の通信・監視システムを読む

ACARSとトランスポンダはなぜ途絶えたのか|MH370の通信・監視システムを読む

航空事故

2014年3月8日午前1時07分29秒。MH370から地上へ、通常のACARSレポートが送られた。位置、高度、速度、残燃料などを含む自動データ通信である。これが、MH370から受信された最後のACARS送信になった。[1]

その約12分後の午前1時19分30秒には、機長による最後の音声交信が残った。さらに午前1時21分13秒までに、航空管制が機体識別に使っていた二次監視レーダー上のMH370の位置シンボルも消えた。[1]

ここだけを見ると、「MH370は通信をすべて切って消えた」と説明したくなる。しかし、実際の機上システムはそれほど単純ではない。ACARS、VHF音声無線、トランスポンダ、SATCOMは別の役割を持つ別系統であり、同じ時刻に一斉に停止したわけでもない。

しかも、午前2時25分には機上のSatellite Data Unit(SDU)がInmarsat地上局へ再びログオン要求を送り、その後も自動的な衛星通信の「ハンドシェイク」は数時間にわたって記録された。つまり、「航空会社へ通常のACARS報告が来なくなった」ことと、「衛星通信装置そのものが完全に死んだ」ことも同義ではない。[1][2]

第3回では、MH370の「通信断絶」をシステムごとに分解する。何が何を送る装置だったのか、どの時刻まで機能が確認され、どこから先が不明なのか。そして、なぜ現在でも「誰かが意図的に全部切った」とは断定できないのかを整理する。

CASE FILE 16|MH370便失踪特集(全10回)

  1. 第1回|MH370便失踪とは?|239人を乗せたボーイング777が消えた事件を追う
  2. 第2回|MH370最後の交信|クアラルンプール離陸から二次レーダー消失まで
  3. 第3回|現在の記事:ACARSとトランスポンダはなぜ途絶えたのか|MH370の通信・監視システムを読む
  4. 第4回|MH370はどこへ向かったのか|軍用レーダーが捉えた引き返しとマラッカ海峡
  5. 第5回|Inmarsat衛星データは何を示したのか|BTO・BFOと「第7アーク」
  6. 第6回|なぜ捜索海域は南インド洋へ移ったのか|2014〜2018年のMH370捜索
  7. 第7回|漂着残骸はMH370のものなのか|レユニオン島のフラペロンとインド洋の物証
  8. 第8回|MH370公式調査は何を結論づけたのか|2018年報告書で確定したこと・分からないこと
  9. 第9回|MH370の仮説はどこまで証拠があるのか|操縦者関与・火災・低酸素・ハイジャック・陰謀論
  10. 第10回|2026年現在、MH370はどこまで分かっているのか|Ocean Infinity再捜索と残された未解明点

この記事で分かること

  • ACARS、VHF音声無線、トランスポンダ、SATCOMの役割がそれぞれ異なること
  • 最後のACARS送信が01:07:29、最後の音声が01:19:30、二次レーダー消失が01:21前後だったこと
  • ACARSが「通信装置そのもの」ではなく、VHFやSATCOMを経由してデータを送る仕組みであること
  • MH370ではACARSの通常レポートが止まった後もSATCOMの信号交換が再開したこと
  • トランスポンダが止まっても一次レーダーには航空機の反射が残り得る理由
  • ACARSとトランスポンダの停止原因を、公式調査が確定できなかったこと
  • 「全部の通信が同時に手動で切られた」という説明が、確認済み事実を超えている理由

先に結論|MH370では「通信」が一つずつ別の形で失われた

MH370の通信・監視記録を理解するうえで最も重要なのは、「通信」という言葉を一つの箱に入れないことである。

系統 主な役割 MH370で確認できる最後の重要記録 その後
ACARS 運航・整備・位置などのデータ通信 01:07:29 最後の自動送信 01:37、02:07に予定されたレポートは未受信
VHF音声無線 パイロットと航空管制官の音声通話 01:19:30 最後の送信 以後、地上との双方向音声通信は確立されず
Mode Sトランスポンダ 二次監視レーダーへ識別・高度等を応答 01:21:13までにSSR上の位置シンボル消失 一次レーダーによる反射記録はその後も存在
SATCOM / SDU 衛星経由の音声・データ通信基盤 02:25に機上SDUがログオン要求 その後も自動ハンドシェイクを継続、08:19が最後の一連の通信

この表だけでも、MH370が「01:21にすべての通信を失った」という説明が正確ではないことが分かる。二次レーダー用トランスポンダが消えた後も、衛星通信システムは後に再接続し、地上局との自動信号交換を続けていた。[1]

ACARSとは何か|飛行機から自動的に届く「データの便」

ACARSはAircraft Communications Addressing and Reporting Systemの略で、航空機と航空会社などの地上施設の間でデジタルデータをやり取りする仕組みである。

MH370の公式調査報告書では、ACARSが扱う情報として、飛行計画、気象情報、機器状態、位置、高度、速度、残燃料、エンジン性能データなどが挙げられている。異常や整備情報を航空会社側へ送ることもできる。[1]

ここで重要なのは、ACARSそのものが一種類の電波を飛ばす専用無線ではないという点である。Boeing 777のACARSは、VHFまたはSATCOMを通信経路として使う。いわばACARSが「送るデータの仕組み」で、VHFやSATCOMは「そのデータを運ぶ道」に近い。

MH370では、地上にいる段階でCenter VHFが音声用に選択されていたため、ACARSのデータ送信にはSATCOMが使われていたと報告書は説明している。[1]

01:07:29|最後のACARS送信

最後に正常受信されたACARS位置レポートは01:07:29だった。報告書に記録されたデータには、高度約35,004ft、Mach 0.821、位置、総重量、残燃料43,800kg、風向・風速、機首方位などが含まれている。[1]

この時点まで、予定されていたACARS通信は正常に行われていた。ところが、通常30分ごとに送られるはずだった次の01:37、さらに02:07のレポートは地上で受信されなかった。[1]

ただし、「01:07:30にACARSが切られた」とは言えない。地上側が確認できるのは、01:07:29が最後に正常受信したレポートだったことと、その後の予定通信が来なかったことだからである。

FACT CHECK|ACARSは01:07に「電源を切られた」のか?

そこまでは確定していない。公式調査は、最後の自動送信後について、ACARSの送信機能が無効化された可能性、またはAIMS側の故障によってACARS送信ができなくなった可能性を挙げている。しかし、FDR/CVRも主な機体残骸も未回収のため、どの事象が実際に起きたかを特定できていない。[1]

ACARSは操縦室から止められるのか

ここはMH370をめぐる議論で頻繁に扱われる部分である。

公式報告書によれば、ACARSはAircraft Information Management System(AIMS)の一機能であり、ACARSだけに直接電源を供給停止する単独操作という構造ではない。一方、操縦室のMultifunction Display(MFD)にあるACARS Manager画面から、VHFとSATCOMによるACARSダウンリンク機能を無効化することは可能だった。[1]

そして重要なのは、その操作をしてもSATCOMの自動ハンドシェイクまでは止まらない点である。ACARSがデータを送らなくなっても、衛星通信端末そのものが生きていれば、衛星ネットワーク側との管理信号の交換は残り得る。

これは後のMH370の記録と整合する。通常のACARSメッセージは戻らなかった一方で、SATCOMのハンドシェイクは後に再び観測されたからである。

ただし、この技術的に「可能だった」という説明を、そのまま「実際に誰かが操作した」という事実へ変換してはいけない。操作可能性と、操作が行われた証拠は別である。

トランスポンダとは何か|レーダーに「私はこの機体です」と返す装置

トランスポンダは、航空管制の二次監視レーダー(SSR)からの問いかけに応答し、航空機の識別情報や高度などを地上へ返す装置である。

一次監視レーダー(PSR)が機体そのものから返ってくる電波反射を見るのに対し、二次監視レーダーは機上トランスポンダからの応答を使う。そのため、トランスポンダの応答がなくなると、管制画面上では航空機識別や高度などを伴った通常の追跡が維持できなくなる。[1]

MH370のBoeing 777には左右2台のMode Sトランスポンダが搭載されていた。通常は左側を選択し、片方が故障しても自動で他方へ切り替わるのではなく、操縦士が手動で切り替える構造だった。[1]

報告書によれば、MH370のトランスポンダは二次レーダー上で失われる直前まで正常に動作しており、機体からシステム故障を知らせるメッセージも受信されていない。01:21前後にMode S/SSR上の追跡情報が消えたが、その原因は確定していない。[1]

トランスポンダも操縦室から停止できる

トランスポンダも、技術的には操縦室から停止可能である。公式報告書は、Transponder Mode Selectorを「STBY」にする方法や、該当回路のサーキットブレーカーによって無効化できる構造を説明している。[1]

しかしACARSと同様に、「止める手段が存在する」ことは「誰かが意図的に止めた」ことの証明ではない。

電源系統、機器故障、選択スイッチ、配線・アビオニクスの状態など、実機の状態を確定するにはFDRや機体そのものの調査が重要になる。MH370ではそれらが回収されていないため、停止理由を直接確認できない。

FACT CHECK|トランスポンダが消えた=機体もレーダーから消えた?

そうではない。トランスポンダ応答がなくなると二次監視レーダー上の識別された航跡は失われるが、一次レーダーは航空機からの電波反射を利用するため、条件が合えば機体そのものを捉えられる。MH370では、二次レーダー情報の消失後もマレーシア軍などの一次レーダー記録が残り、その後の西向き飛行の再構成に使われた。[2]

SATCOMとは何か|ACARSとは別に残った「衛星との接続記録」

SATCOMはSatellite Communications、つまり衛星通信システムである。MH370のSATCOMは、衛星経由で音声やACARSデータなどを地上へつなぐ通信基盤だった。

その中心となるSatellite Data Unit(SDU)は、機上端末が衛星ネットワークへ接続するときにログオン要求を送る。また、地上局は一定時間通信がない場合に機体へ「まだネットワーク上にいるか」と問いかけ、機体が応答する。この自動的な信号交換が、MH370報道でよく使われる「ハンドシェイク」または「ping」である。[1]

重要なのは、ハンドシェイクには乗員が入力した文章や会話内容が入っているわけではないことだ。元来は通信接続を維持・確認するための管理信号であり、後にその通信時刻や信号特性が飛行経路解析へ利用された。

02:25|SATCOMが再びログオンした

MH370のSATCOM記録では、最後のACARS通信後、少なくとも一定時間リンクが失われたことが分かっている。

地上局は02:03:41にACARS関連のデータをアップリンクしたが、SATCOMから応答を受けなかった。公式報告書は、SATCOMリンクが01:07:48から02:03:41までの間のどこかで失われたと整理している。また、操縦室からSATCOMを手動ログオフした証拠はないとしている。[1]

その後の02:25:27、機上SDUがInmarsat地上局へログオン要求を送った。ATSBは、このログオン系列について、SDUへの電力供給がいったん途絶えた後に復帰した場合と整合すると説明している。ここで注意すべきなのは、ATSBが言う「power loss」は航空機全体の完全停電ではなく、SDUへの電力供給についての話だということである。[3]

02:25以降、SATCOMリンクは長時間にわたり利用可能な状態を示した。03:41、04:41、05:41、06:41、08:11には地上局主導のハンドシェイクが記録され、02:39と07:13には地上から航空機への衛星電話発信も行われたが応答はなかった。08:19には機上側から再びログオン要求が発生し、これが最後の一連のSATCOM通信になった。[1]

「ACARSが止まったのにSATCOMは生きていた」は矛盾しない

一見すると奇妙に見える。ACARSはSATCOMを使っていたのに、ACARS送信は止まり、SATCOMのハンドシェイクだけは残ったからだ。

だが、これはシステムの階層を分けると理解できる。

役割
アプリケーション/データ機能 何の情報を送るか ACARSの位置・整備・運航メッセージ
通信経路 データをどの回線で運ぶか VHF / SATCOM
衛星ネットワーク管理 端末がネットワークに接続しているか確認 SDUログオン、ハンドシェイク

たとえるなら、ACARSは「メールの内容」、SATCOMは「通信回線」、ハンドシェイクは「端末がネットワークに接続されていることを確認する信号」に近い。メールを送らなくても、端末とネットワークの接続確認だけは行われ得る。

もちろん実際の航空通信システムはこの比喩より複雑だが、MH370を理解するうえでは、ACARSメッセージがないことと、SATCOM端末が完全停止していることを分けるのが重要である。

4つの系統を時系列で並べる

マレーシア時間 系統 記録 そこから言えること
01:07:29 ACARS 最後の正常な自動レポート この時点までは予定通信が正常
01:19:30 VHF音声 最後の音声送信 少なくともこの時刻まで音声送信が成立
01:21前後 トランスポンダ / SSR Mode S・二次レーダー位置情報が消失 通常の識別されたレーダー追跡を喪失
01:37 ACARS 予定レポート未受信 通常の自動レポートが来なくなったことを確認
02:03:41 SATCOM 地上からのデータに応答なし この時点ではSATCOMリンクなし
02:25:27 SATCOM / SDU 機上からログオン要求 衛星通信端末が再びネットワークへ接続
03:41〜08:11 SATCOM 複数回の自動ハンドシェイク 衛星通信リンクが断続的ではなく長時間利用可能だったことを示す
08:19 SATCOM / SDU 最後のログオン系列 最後の衛星通信記録

では、なぜACARSとトランスポンダは途絶えたのか

ここがこの記事の中心的な問いだが、結論は明確である。現在の証拠だけでは確定できない。

ACARSについては、操縦室からダウンリンクを無効化できる。AIMS側の故障でも送信できなくなる可能性がある。トランスポンダも操縦室からSTBYへ切り替えることができ、電源や機器故障でも応答を失う可能性がある。SATCOMについては、02:25のログオンがSDUへの電力供給中断・復帰と整合するが、その電源変化を引き起こした原因までは特定されていない。[1][3]

そして、これら複数の系統が比較的短い時間帯に通常状態から外れたことは重要な事実だが、そこから直接「故意だった」「火災だった」「電気系統故障だった」と一つの原因へ飛ぶことはできない。

FACT CHECK|「全部の通信が同時に手動で切られた」は確定事項?

確定事項ではない。確認できるのは、ACARSの最後の正常送信、最後のVHF音声、トランスポンダ由来の二次レーダー消失、SATCOMリンクの一時喪失と再ログオンという別々の記録である。それぞれの停止・再開理由について、公式調査は単一の原因を確定していない。機上装置を手動で無効化できる技術的手段は存在するが、それは実際にその操作が行われた証拠とは別である。[1]

この違いがMH370捜索を大きく変えた

もし01:21で本当にすべての通信も監視も完全に途絶えていたなら、MH370のその後はほとんど追えなかった。

実際にはそうではなかった。二次レーダーが消えた後も一次レーダーが機体の移動を捉え、さらにそのレーダー追跡が終わった後も、SATCOMの自動信号が残った。ATSBはMH370の飛行を、二次レーダーで追えた区間 → 一次レーダーで追えた区間 → 衛星通信ログだけが残る区間の三段階として整理している。[4]

この最後の衛星通信記録がなければ、「MH370がその後も何時間も飛び続けた」という現在の理解や、南インド洋へ捜索海域を絞る作業は成立しなかった。

つまり、MH370の通信システムは単に「謎を深くした」だけではない。通常なら意味を持たない自動接続ログが、他の位置情報を失った後では、事件を追うための最重要証拠へ変わったのである。

まとめ|MH370の謎は「通信が消えた」ではなく「別系統が別々に消え、衛星だけが残った」ことにある

MH370から最後に正常なACARSレポートが届いたのは01:07:29。最後のVHF音声は01:19:30。トランスポンダを使う二次レーダー上の追跡は01:21前後までに失われた。

しかし、その後も航空機そのものは一次レーダーで追跡され、さらに02:25にはSATCOMのSDUがInmarsatネットワークへ再ログオンした。その後も複数の自動ハンドシェイクが続き、最後の一連の衛星通信は08:19に記録された。

ACARS、トランスポンダ、SATCOMには手動操作で機能を止められる部分がある。しかし、MH370で実際に何が操作され、何が故障し、なぜSDUの電力が変化したのかは確定していない。

したがって、現在の証拠から最も正確に言えるのは、「全部の通信が一斉に消えた」のではなく、通常の通信・監視手段が異なる時刻に失われ、最後には衛星通信の管理信号だけが飛行を追う手掛かりとして残ったということである。

次の第4回では、この通信断絶の後にMH370がどこへ向かったのかを追う。二次レーダーから消えた航空機は、一次・軍用レーダー上ではマレー半島を横切り、マラッカ海峡方向へ移動していた。どのレーダーが何を捉え、どこまでをMH370の航跡として確認できるのかを整理する。


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CASE FILE 16|全10回

  1. 第1回|MH370便失踪とは?|239人を乗せたボーイング777が消えた事件を追う
  2. 第2回|MH370最後の交信|クアラルンプール離陸から二次レーダー消失まで
  3. 第3回|現在の記事:ACARSとトランスポンダはなぜ途絶えたのか|MH370の通信・監視システムを読む
  4. 第4回|MH370はどこへ向かったのか|軍用レーダーが捉えた引き返しとマラッカ海峡
  5. 第5回|Inmarsat衛星データは何を示したのか|BTO・BFOと「第7アーク」
  6. 第6回|なぜ捜索海域は南インド洋へ移ったのか|2014〜2018年のMH370捜索
  7. 第7回|漂着残骸はMH370のものなのか|レユニオン島のフラペロンとインド洋の物証
  8. 第8回|MH370公式調査は何を結論づけたのか|2018年報告書で確定したこと・分からないこと
  9. 第9回|MH370の仮説はどこまで証拠があるのか|操縦者関与・火災・低酸素・ハイジャック・陰謀論
  10. 第10回|2026年現在、MH370はどこまで分かっているのか|Ocean Infinity再捜索と残された未解明点

今回出てきた言葉

ACARS
Aircraft Communications Addressing and Reporting System。航空機と航空会社などの地上施設の間で、位置・運航・整備情報などをデータ通信する仕組み。VHFまたはSATCOMを通信経路として利用する。
トランスポンダ
地上の二次監視レーダーなどからの問いかけに応答し、航空機の識別情報や高度などを返す装置。MH370には2台のMode Sトランスポンダが搭載されていた。
SSR(二次監視レーダー)
航空機のトランスポンダ応答を利用して識別や高度情報などを取得するレーダー方式。トランスポンダ応答がなくなると通常の識別された航跡を維持できない。
PSR(一次監視レーダー)
送信した電波が航空機などに反射して戻ることで物体を捉えるレーダー。機上トランスポンダからの協力がなくても条件次第で対象を捉えられる。
SATCOM
Satellite Communications。航空機と地上を衛星経由で結ぶ通信システム。MH370では音声やACARS用の通信基盤だけでなく、自動ログオン/ハンドシェイクの記録が飛行経路解析に使われた。
SDU
Satellite Data Unit。機上SATCOMシステムの中核となる装置。MH370では02:25と08:19にSDU側からログオン要求が記録されている。
ハンドシェイク
衛星地上局と航空機側SATCOM端末の間で行われる自動的な接続確認信号。乗員が送ったメッセージではない。
AIMS
Aircraft Information Management System。Boeing 777で各種航空電子システムの情報管理を担う統合システム。ACARS機能もこのAIMSの一部として実装されている。

出典・参考資料

  • Ministry of Transport Malaysia, Safety Investigation Report MH370 (9M-MRO), 2018.
    ACARS、Mode Sトランスポンダ、SATCOM、SDU、最後のACARS送信、予定レポート未受信、トランスポンダ停止時刻、機上で可能な操作、衛星通信ログの主要根拠。
    マレーシア運輸省公式PDFを開く
  • Australian Transport Safety Bureau, MH370 Operational Search Reports.
    02:25のSDU再ログオン前に言及される「power loss」が航空機全体ではなくSDUへの電力供給を指すこと、18:03:41 UTC時点でSDUが地上局の自動問い合わせへ応答せず18:25:27 UTCに再び動作したことの確認に使用。
    ATSB公式ページを開く
  • Australian Transport Safety Bureau, Considerations on defining the search area — MH370.
    MH370の飛行経路を「二次レーダー区間」「一次レーダー区間」「衛星通信ログ区間」に分けて理解するための補助資料として使用。
    ATSB公式解説を開く

本文中の時刻は、特記しない限りマレーシア時間(MYT/UTC+8)で表記した。公式資料ではUTC表記も併記されるため、UTC 17:07はMYT 01:07、UTC 18:25はMYT 02:25に相当する。ACARS、トランスポンダ、SATCOMの停止・再開理由については、技術的に可能な操作と実際に起きた事象を区別し、2018年の公式調査で原因が確定していない部分を断定していない。