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破綻後の世界――リーマン・ショックは何を変えたのか

2008年危機後に資本・流動性・破綻処理の防御層が追加された金融制度を象徴した編集的再構成。
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STORY SO FAR

前回「連鎖するパニック――なぜ信用市場が凍ったのか」で確認した論点を受け、この回では破綻後の世界――リーマン・ショックは何を変えたのかの後に何が変わり、何が残ったのか。を扱う。

2008年9月15日、Lehman Brothers Holdings Inc.がChapter 11を申請した。[1]

翌日にはReserve Primary Fundが元本割れし、AIGには公的支援が必要になった。

prime money market fundsから巨額の資金が流出し、commercial paper市場では企業が数日を超える期間の資金を借りにくくなった。

そこから米国政府と連邦準備制度の対応は、個別企業をつなぐ段階から金融システム全体を支える段階へ変わる。

そして危機後には、

巨大金融機関をどう監督するか。

資金繰り危機へどれだけ耐えられるようにするか。

もし倒れるなら、どう倒すか。

中央銀行の緊急融資をどこまで認めるか。

という制度そのものが作り替えられた。

ただし、ここで「Lehmanを教訓に制度は完成し、同じ問題は起きなくなった」と結論することはできない。

制度改革の狙いは危機を不可能にすることではなく、耐性を高め、危機を早く把握し、それでも破綻するときの処理手段を増やすことだった。

9月21日――残った二つの独立投資銀行が銀行持株会社へ

Lehman破産から6日後の9月21日、Federal Reserve BoardはGoldman SachsとMorgan Stanleyがbank holding companyになる申請を緊急承認した。

これは企業名を変えただけではない。

危機前、Wall Streetの主要独立投資銀行として挙げられたBear Stearns、Lehman Brothers、Merrill Lynch、Goldman Sachs、Morgan Stanleyの5社は、数か月の間にまったく別の形になる。

Bear StearnsはJPMorgan Chaseに買収された。

LehmanはChapter 11へ入った。

Merrill LynchはBank of Americaによる買収に合意した。

Goldman SachsとMorgan Stanleyはbank holding companyへ移行した。

危機前の「大手独立投資銀行5社」という構図は消えた。

ただし、investment bankingという業務そのものが消えたわけではない。

GoldmanもMorgan Stanleyも、その後も証券引受、M&A助言、トレーディングなどの投資銀行業務を続ける。

変わったのはグループの法的・監督上の器である。

bank holding companyになることで、Federal Reserveによる連結監督の枠組みに入り、銀行子会社と組み合わせた資金調達・流動性の選択肢を持つ構造へ移った。

Fedは9月21日の承認と同時に、移行期のGoldmanとMorgan Stanleyのbroker-dealer subsidiariesに対する流動性支援の範囲も拡張した。

Article 03で見た「非銀行投資銀行が短期市場から資金を借り続ける」というモデルが、危機によって大きく揺さぶられたことを象徴する出来事だった。

10月3日――TARPの法的な器ができる

Lehman破産から約3週間後、2008年10月3日にEmergency Economic Stabilization Act、EESAが成立した。[1]

この法律で作られたのがTroubled Asset Relief Program、TARPである。

法律はTreasuryに対し、金融システム安定化のためtroubled assetsを購入・保証する強力な権限を与えた。

金額は段階的だった。

法律成立時にまず2500億ドル。

大統領のcertificationで3500億ドル。

さらに手続を経て最大7000億ドル。

この「7000億ドル」がTARPを象徴する数字になった。

しかし、ここにはよくある誤解がある。

7000億ドルは、その日に政府が銀行へ現金7000億ドルを渡した金額ではない。

法律上使える購入権限の上限だった。

実際のTARPは、その後複数の異なるプログラムへ展開される。

「不良資産購入」から「資本注入」へ

制度名はTroubled Asset Relief Programだった。

そのため当初は、銀行が持つ価格の付かない住宅ローン関連資産などを政府が買い取り、バランスシートから外す構想が中心に見えた。

しかし市場悪化の速度に対し、個別の複雑な資産を評価して買うには時間がかかる。

そこでTreasuryは銀行の資本そのものを増やす方法を前面に出した。

10月14日、TreasuryはCapital Purchase Programとして、米金融機関へ最大2500億ドルの資本を供給すると発表した。

形式は主に優先株の購入だった。

最初の大手9金融機関は、合計1250億ドルの参加意向を示した。

資産を1本ずつ政府へ売るのではない。

政府が優先株を買う。

銀行側には自己資本が入る。

損失を吸収できるクッションが増える。

資本不足への恐怖を減らし、信用供給を維持しようとする。

Lehman危機の段階で問題になった「Treasuryには議会承認なしに資本を入れる一般権限がない」という制約に対し、Congressが新しい法的権限を与えたことになる。

FACT CHECK――「7000億ドルを全部銀行へ配った」ではない

TARPを語るとき、authorization、commitment、disbursement、最終的なcostを混ぜてはいけない。

7000億ドルは当初の法定上限。

Capital Purchase Programとして発表された枠は2500億ドル。

最初の9社の参加額は1250億ドル。

TARPはその後、銀行だけでなくcredit markets、AIG、自動車産業、住宅支援など複数分野へ使われた。

さらに2010年のDodd-Frank ActはTARPの権限上限を4750億ドルへ削減した。

したがって、

「米政府は銀行救済に7000億ドルを使い切った」

という一文では、制度の規模も実際の資金フローも正しく表せない。

TARPを支持するか批判するかとは別に、数字の種類を分ける必要がある。

危機前には「大手非銀行金融会社を処理する専用制度」がなかった

LehmanのChapter 11が示した制度上の穴は大きかった。

FDICは銀行が破綻した場合、預金を別銀行へ移し、資産を売却し、bridge bankを使うなど、銀行を迅速に処理する権限を長年持っていた。

しかしLehman Brothers Holdingsは銀行そのものではない。

持株会社の下に米国broker-dealer、海外法人、デリバティブ会社、投資運用会社などが広がっていた。

LBHIには一般企業向けChapter 11を使う。

broker-dealerには別の制度。

海外法人は各国の法制度。

デリバティブやrepoには通常債務と異なる契約上の扱い。

こうして一つのグローバル金融グループが複数の法制度へ同時に分解される。

破産申請直後に契約相手が担保を処分したり、契約を終了したりすれば、事業全体として売れば残ったはずのfranchise valueまで失われる可能性がある。

Lehmanの破綻は、「倒すか救うか」だけでなく、

「倒すなら、どんな制度で倒すのか」

という第三の問題を突き付けた。

2010年――Dodd-Frank Act

2010年7月21日、Dodd-Frank Wall Street Reform and Consumer Protection Actが成立した。

巨大な法律であり、Lehmanだけを対象に作られたものではない。

住宅金融、デリバティブ、消費者保護、銀行監督、システミックリスクなど広い領域を扱う。

CASE074で重要なのは、その中でも二つの方向である。

一つは、巨大金融機関を「倒れにくくする」側。

もう一つは、「倒れても処理できるようにする」側である。

Living Will――破綻する前に「自分の解体図」を作る

Dodd-Frank Title Iでは、大型銀行組織や対象となる金融会社にresolution planの提出を求める仕組みが作られた。

一般にliving will、リビング・ウィルと呼ばれる。

遺言という名前だが、目的は財産相続ではない。

重大な財務危機や破綻が起きたとき、

どの法人に重要業務があるのか。

どの会社がどの会社へ資金を出しているのか。

主要な決済・IT・デリバティブ契約はどこにあるのか。

どのように破産法の下で迅速かつ秩序ある処理を行うのか。

を事前に整理する。

Lehmanでは、危機の週末に初めて巨大グループの資産、法人、契約、資金需要を短時間で整理しなければならなかった。

Living willは、その作業を平時から行わせる発想である。

制度の対象や提出頻度は後の法律・規則改正で変化しているため、「2010年当時の資産額基準が今もそのまま」という理解は正しくない。

重要なのは、大型金融グループに自らのorderly resolution strategyを事前に作らせる原則が制度化されたことである。

ストレステスト――過去の決算ではなく「悪化した未来」を見る

危機前の監督では、現在の自己資本比率や過去の損失を見るだけでは足りなかった。

Lehmanは2007年度に記録的利益を報告した翌年に破綻した。

現在の数字が健全でも、

住宅価格がさらに下がったらどうなるか。

失業率が上がったら。

株価が急落したら。

信用損失が増えたら。

その状態でも資本を維持できるか。

というforward-lookingな評価が必要になる。

危機後、large-bank stress testingとcapital planningは米国監督の重要な道具として定着した。

現在の制度では、対象金融機関に対し厳しい仮想景気後退などのscenarioを当て、損失、収益、資本がどう変化するかを評価する。

同時にliquidity risk management、liquidity stress testing、高流動性資産bufferなども大手金融機関のprudential frameworkへ組み込まれた。

Article 03で見た、

「資産価値はあるが明日の現金がない」

という危機への対策である。

Title II――Chapter 11以外の「秩序ある清算」

Dodd-Frankでもう一つ大きかったのがTitle IIのOrderly Liquidation Authority、OLAである。

これは巨大金融会社を救済して存続させる制度ではない。

法律上はliquidation、清算のための権限である。

通常のbankruptcyで処理すると米国の金融安定に重大な悪影響を与えると判断される対象金融会社について、一定の手続きを経てFDICをreceiverとして処理する枠組みを設けた。

銀行破綻処理でFDICが使ってきた考え方を、一定のsystemically important financial companyへ拡張したものと考えると分かりやすい。

FDICは必要に応じて事業をbridge financial companyへ移す。

重要業務を継続する。

資産をまとめて売却する。

契約関係を一定期間維持しながら処理する。

事業価値を失わないように時間を作る。

こうした道具によって、「金曜夜に破綻し、月曜朝までに全世界で契約がばらばらになる」事態を避けようとする。

損失は誰が負うのか

OLAを「大企業を税金で救う制度」と理解すると、法律の設計とは逆になる。

Dodd-Frank Title IIは、shareholdersとcreditorsが金融会社の損失を負担することを原則として明記した。

会社の状態に責任を持つmanagementをそのまま残さないことも定めた。

さらにSection 214は、taxpayer fundsを金融会社のliquidation回避に使わないこと、Title IIの行使で納税者に損失を負わせないことを明文化している。

処理過程で資金が必要な場合でも、最終的には対象会社の資産処分や金融セクターへのassessmentなどで回収する設計である。

「公的な流動性を一時的に使うこと」と「株主や債権者の損失を政府が肩代わりすること」は同じではない。

ここは2008年のad hocな救済議論と区別すべき点である。

「OLAがあればLehmanは問題なく処理できた」?

FDICは2011年、Dodd-Frank Title IIが2008年に存在していたらLehmanをどう処理できたかという反実仮想の研究を公表した。

FDICの分析では、

事前に資産と法人構造を調査する。

破綻前から買い手候補を準備する。

短期流動性を確保する。

重要な契約を直ちに終了させず価値を保つ。

bridge機能を使いながら主要事業を売却する。

といった権限によって、Chapter 11より秩序ある処理ができた可能性があるとしている。

この研究はLehman破綻が制度設計へどう反映されたかを示すが、あくまでcounterfactual、反実仮想である。2008年にOLAが存在すれば必ずパニックを防げた、あるいは特定の回収率を実現できたことを証明するものではない。

Section 13(3)も危機後に狭くなった

Article 06では、2008年当時のFedがSection 13(3)に基づき非銀行金融会社へ緊急融資できたことを見た。

Bear Stearns、AIG、そして市場向けの多くの緊急facilityで重要な法的根拠になった。

Dodd-Frankは、この権限も変更した。

危機後の13(3)では、特定の一社を破産から救うためだけに設計した融資ではなく、broad-based eligibilityを持つprogramまたはfacilityであることが求められる。

Treasury Secretaryの承認も必要になった。

insolvent borrowerへの融資を禁止する手続も設けられた。

Fedの緊急融資権限をなくしたわけではない。

「特定企業の週末救済」の道具として使う範囲を狭め、市場全体を対象とするfacilityへ重心を移した。

一方、特定のsystemically important companyが実際に破綻する場合の処理は、Title IIや通常のbankruptcy、事前resolution planの領域へ分ける。

危機前より、流動性供給と破綻処理の役割分担を明確にしようとした設計である。

FACT CHECK――「Dodd-Frankでtoo big to failは完全に消えた」?

法律の目的には、巨大金融機関の破綻が納税者救済へ自動的につながる構造を減らすことが含まれている。

しかし、それを

「大手金融機関はもう危機にならない」

「公的機関は今後いかなる緊急措置も取らない」

と読み替えることはできない。

Living willは破綻準備を改善する。

stress testは資本耐性を調べる。

liquidity requirementsは資金繰り耐性を高める。

OLAは破綻時の処理道具を増やす。

13(3)改革は中央銀行緊急融資の条件を変える。

どれもリスクをゼロにする装置ではない。

制度の意味は「破綻しないことの保証」ではなく、「破綻前と破綻後の選択肢を増やすこと」にある。

最後に――なぜ一社の破綻が世界を揺らしたのか

ここでCASE074最初の問いへ戻る。

なぜ一投資銀行の破綻が、すでに進行していた信用不安を世界的な金融パニックへ変えたのか。

答えは、「Lehmanが巨大だったから」だけではない。

さらに言えば、Lehmanが金融危機をゼロから作ったわけでもない。

Article 01で見たように、Lehmanは住宅・商業用不動産関連資産を大きく抱える巨大投資銀行になっていた。

Article 02では、住宅市場の反転が証券価格と不動産評価を下げ、数十億ドル単位の評価損を生んだ。

Article 03では、高レバレッジと短期資金が、その資産損失を「今日現金を用意できるか」という流動性問題へ変えた。

Article 04では、Repo 105によって期末の貸借対照表が通常時より小さく見え、市場が会社のレバレッジを理解するうえで重要な情報が開示されていなかった問題を見た。

Article 05では、KDB、Bank of America、Barclaysという選択肢が、資産評価、保証、規制、時間制約によって次々に消えた。

Article 06では、政府・Fedが使える法的手段と担保評価を巡る争いの中で、最終的にLBHIがChapter 11へ入った。

そしてArticle 07で、Lehman債の直接損失がReserve Primary Fundの元本割れを通じてMMF取り付けへ変わり、CP市場、企業資金調達、既に危機にあったAIGへ信用収縮が広がったことを見た。

ここまでを一つの因果にすると、

住宅・信用市場の悪化 → 不透明で流動性の低い資産の損失 → 高レバレッジ金融機関の資本圧迫 → 短期資金の引き揚げ → 買い手・公的bridgeの失敗 → 巨大金融会社の無秩序なChapter 11 → 短期安全資産への信頼低下 → MMFから資金逃避 → CPなど市場型資金調達の縮小 → 金融・非金融企業が同時に現金を抱え込む

という連鎖になる。

Lehmanが変えたのは「損失額」より期待だった

Lehmanの負債を持っていたすべての企業が即座に倒れたわけではない。

Lehmanへの直接損失だけで世界金融システム全体の損失額を説明することもできない。

より大きかったのは、参加者の期待の変化だった。

大手金融会社の債務でもデフォルトする。

巨大非銀行会社でも秩序ある破綻処理の仕組みは十分ではない。

現金同等物だと思っていたMMFでも元本割れする。

今日売れる証券が明日も同じ価格で売れるとは限らない。

短期資金の貸し手は、満期になれば更新しなくてよい。

ほかの投資家より早く逃げた方が安全かもしれない。

その認識が広がると、合理的な個別行動がシステム全体では危険になる。

一社ずつなら安全策である

現金を増やす。

貸出期間を短くする。

担保を多く取る。

リスク資産を売る。

民間信用を避ける。

という行動が、全社同時に起きると金融システムから流動性を奪う。

これこそが2008年9月の転換点だった。

「リーマン・ショック」という名前の限界

日本では2008年の危機を「リーマン・ショック」と呼ぶことが多い。

象徴としては分かりやすい。

しかし、この言葉には一つの危険がある。

Lehmanが倒れる前は世界の金融システムが健全で、9月15日に突然危機が始まったように見えることだ。

実際には住宅バブルの崩壊、サブプライムローンの延滞、証券化商品の損失、Bear Stearns救済、Fannie MaeとFreddie Macの公的管理など、危機はすでに進行していた。

FCICも危機の原因をLehman一社に置いてはいない。

住宅金融、証券化、レバレッジ、リスク管理、信用格付け、規制・監督、短期資金市場など複数の脆弱性を挙げている。

したがってCASE074の最終回答は、

「Lehmanが世界金融危機を起こした」

ではない。

より正確には、

すでに燃えやすくなっていた金融システムで、Lehmanの無秩序な破綻が、信用と短期資金のネットワークを通じて多数の参加者を同時に防御行動へ走らせ、進行中の危機を世界的な金融パニックへ加速させた。

となる。

そして危機後の制度改革は、その連鎖の各場所へ別々の防火扉を追加しようとした。

資本。

流動性。

stress test。

living will。

Orderly Liquidation Authority。

広範囲型へ制約された13(3)緊急融資。

一つの万能装置ではない。2008年の危機が示したのは、複数の仕組みが連鎖するsystem failureだったからである。

FACT CHECK

「TARPは7000億ドルを銀行へそのまま配った制度」?

違う。7000億ドルはEESAで認められた最大authorizationで、実際のプログラムは段階的に実施された。10月14日のCapital Purchase Program枠は2500億ドルで、最初の大手9社は1250億ドルだった。[2]TARPは銀行資本以外の分野にも使われ、Dodd-Frankで権限上限は4750億ドルへ削減された。

「2008年で投資銀行はなくなった」?

違う。危機前の主要独立投資銀行5社という企業構造が消えたのであって、investment banking業務はその後も銀行持株会社や他の金融グループ内で続いた。

「Dodd-Frankは大手金融機関を絶対に破綻させない法律」?

違う。むしろTitle IIは一定の金融会社をorderly liquidationする枠組みを設け、Title Iはbankruptcyでのorderly resolution計画を事前に求める。破綻そのものを禁止する制度ではない。

「OLAは政府が債権者を税金で救う制度」?

法文の設計は逆である。Title IIはshareholdersとcreditorsが損失を負う原則を置き、taxpayer lossesを禁止している。処理中の一時資金と、最終損失の公的負担は区別する必要がある。

「FDICの2011年研究で、OLAならLehman危機を確実に防げたことが証明された」?

違う。FDICがDodd-Frankの権限を2008年Lehmanへ適用した場合を分析したcounterfactual studyであり、実際に起きた歴史ではない。

「Dodd-FrankでFedの13(3)緊急融資権限は消えた」?

消えていない。危機後はbroad-based eligibilityを持つprogram/facility、Treasury Secretaryの承認、insolvent borrowerへの制限などが追加され、特定の破綻企業だけを救う道具として使う範囲が狭められた。

「Lehman破産が金融危機の唯一の原因」?

違う。住宅・信用市場の危機はLehman以前から進行していた。Lehman破産の重要性は、すでに脆弱だった高レバレッジ・短期資金依存・相互接続型の金融システムに大きな信用ショックを与え、run dynamicsを急速に広げた点にある。

FACT CHECK|出典・参考資料

  1. [1] U.S. Government Publishing Office, Emergency Economic Stabilization Act of 2008, Public Law 110-343
  2. [2] U.S. Department of the Treasury, U.S. Government Actions to Strengthen Market Stability, Oct. 14, 2008
  3. [3] U.S. Department of the Treasury, Troubled Asset Relief Program
  4. [4] Board of Governors of the Federal Reserve System, approval of Goldman Sachs and Morgan Stanley bank holding company applications, Sep. 21, 2008
  5. [5] U.S. Government Publishing Office, Dodd-Frank Wall Street Reform and Consumer Protection Act, Public Law 111-203
  6. [6] Public Law 111-203, Title II — Orderly Liquidation Authority
  7. [7] Federal Deposit Insurance Corporation, The Orderly Liquidation of Lehman Brothers Holdings under the Dodd-Frank Act
  8. [8] Board of Governors of the Federal Reserve System, Living Wills (or Resolution Plans)
  9. [9] Board of Governors of the Federal Reserve System, Regulation YY — Enhanced Prudential Standards
  10. [10] Board of Governors of the Federal Reserve System, final rule on emergency lending under Section 13(3)
  11. [11] Board of Governors of the Federal Reserve System, Stress Tests and Capital Planning
  12. [12] Financial Crisis Inquiry Commission, The Financial Crisis Inquiry Report
  1. 01 巨大投資銀行の内側――リーマンは何で稼いでいたのか
  2. 02 リーマン・ブラザーズ破綻|住宅バブルの反転――損失はどこから膨らんだのか
  3. 03 リーマン・ブラザーズ破綻|30倍のレバレッジ――短期資金依存はなぜ危険だったのか
  4. 04 リーマン・ブラザーズ破綻|Repo 105――見かけのレバレッジはどう下げられたのか
  5. 05 リーマン・ブラザーズ破綻|最後の一週間――買い手探しはなぜ失敗したのか
  6. 06 2008年9月15日――なぜリーマンは破綻したのか
  7. 07 リーマン・ブラザーズ破綻|連鎖するパニック――なぜ信用市場が凍ったのか
  8. 08 破綻後の世界――リーマン・ショックは何を変えたのか

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